5月29日は、呉服の日。着物好きの方にとっては、この日は結構重要じゃないかと思うのです。
着物には時期ごとに着る着物の種類があって、秋から春(10月〜5月末)までは「袷(あわせ)」という裏地付きの着物を着ます。春が過ぎ、暑い時期が近づく6月と、残暑の時期の9月には、裏地のない「単衣(ひとえ)」を着ます。真夏の7月、8月は、透け感のある「紗(しゃ)」や「絽(ろ)」といった織り方の着物や浴衣を着るというのが、基本とされています。
最近の気候は昔と違い、5月でも暑い日が増え、暦通りにはいきませんが、袷を着ることができるのは5月いっぱいまで、といわれています。だからこそ、呉服の日というのは、着ておきたかった袷があるのよ、とここぞとばかりに着ておく日、となっている人も少なくないのでは、と思っています。
もちろん、何月だって、着たいものがあるなら着ればいいと思いますし、暑いのに無理して分厚い着物を着る必要もないと思います。ただ、着れる口実があるならば、それにかこつけるのが着物好き。子どものお祝い行事があれば、子どもより目立っているといわれようが何だろうが着物を着る。友達の結婚式にお呼ばれしたらここぞとばかりに着物を着る。何もなくても、着たくなったら着る。「今日何かあるの?」と言われて何もなくても臆せず着る。着物は自由に楽しむファッションの一つです。
さて、着物ほど、日本酒に似つかわしいものはないと思っているのは私だけかもしれませんが、せっかくの呉服の日なので、着物を着て日本酒を堪能することにしましょう。
着物は花を添えるという意味で、お祝い事にふさわしい装いです。花見に一杯。着物を愛でながら一杯いくのも乙なもの。
着物を持っていない人も、旅行先でレンタルして、お寿司と一緒に日本酒! なんて贅沢、ありじゃないでしょうか。汚れるのが心配? 大丈夫。心配な方はポリエステル(化繊)の着物を選ぶと良いでしょう。レンタル屋さんに聞けばどれがポリエステルか教えてくれます。むしろ最近はほとんどポリエステルじゃないでしょうか。柄が現代ものの着物は大体ポリエステルです。
これから暑くなってきたら、浴衣で夕涼みしながらクイっといくのもいいですよね。昔からよくある藍染めの浴衣は、蚊よけの効果もあるんだとか。家で着る浴衣はさらっと。帯も適当でいいんです。装いはそこそこに、木桶に張った氷水に徳利をつけて、しっかり冷やしていただきたい。うちわもなんだかこだわりたくなっちゃう。風鈴は銅器の音色で。肴はなんだろなぁ…。もうスルメで十分だな。
秋になれば、ひやおろしという日本酒が出回ります。夏に熟成保存された日本酒は、コクが深まって、しっかりとした味わい。着物を纏って、菊の節句や、中秋の名月を堪能するのも良いですね。菊が手に入るなら、そっとお酒に浮かべて。月が見れるなら月を仰いで。情緒に浸る夜長はきっとお酒をおいしいと思わせてくれるはず。
冬は言わずもがな、お正月にハレ着とお屠蘇。これぞ日本の代表シーンですよね。お屠蘇は日本酒やみりんに薬草をつけこみ、無病息災を願っていただくもの。実は飲んだことがない方は多いかと。私もないです。お屠蘇を作る薬草や、出来合いのお屠蘇酒が売ってあるみたいなので、気になる人はそろえて試してみるのもいいでしょう。元旦、ハレ着を着たらおせちを食べる前にどうぞ。一年の始まりが、なんだか身の引き締まる思いになりそう。
そうして花見の時期が来て、えんやえんやと花見に一杯。1年を通して日本酒と着物は似つかわしく存在しているのだと思います。
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