
「日本酒が好きなら、ぜひ行ってみて」 と教えてもらったのが、山中温泉にある、日本酒を主に提供するバー『和酒BAR 縁がわ』さんでした。日本酒への探求心が強いというマスターの下木雄介さんに会いに行ってきたので、さっそくご紹介します。
(取材時期:2025年3月)
石川県加賀市にある山中温泉にはシンボルとなるこおろぎ橋から総湯までの道「ゆげ街道」が賑わいの中心となっており、無料観光駐車場から「ゆげ街道」を歩いてすぐの坂道を上ったところに『和酒BAR 縁がわ』さんがあります。
それではさっそく取材の様子を、今回は会話形式でどうぞ!
お店がオープンしたのはいつですか?


2014年の9月にオープンして、11年目です。
(いただいたお名刺を見て)※酒匠の番号が270番⁉ これってもしかしてすごいことでは⁉

※酒匠:日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)が認定している日本酒と焼酎の資格です。唎酒師よりも上の資格とされます。

石川県で初めて酒匠を取得しました。今はだいぶ酒匠も増えましたね。最近も国際酒匠の資格を持った中国人の方がお見えになりました。
やはりすごい人だった! 日本だけでなく、海外からも日本酒好きが集まるお店なんですね。やはり予約客が多いですか?


バーの形態としては予約客は多いかもしれませんが、これまではふらっと立ち寄るお客様も多かったです。
ところがコロナ渦以降、宿泊のスタイルが変わり、宿の中で過ごすスタイルが多くなりました。
確かに、宿泊施設の中で楽しめるサービスが充実してきた気がします。


宿泊施設と切磋琢磨しあいながら、『和酒BAR縁がわ』が魅力的なコンテンツだと観光のお客様たちに思ってもらえるように努力する必要があるなと感じます。

おっしゃるとおりですね!
ここへ来たとき、酒蔵っぽいという印象を持ちました。
店舗を造る上でのこだわりがあれば教えてください。


日本酒を主としたお店なので、酒蔵に入ったような、日本に来たようなお店にしたいと思いました。家主に「3年後に買い取ります」と約束して、同級生の大工さんと一緒に改築しました。これが僕のイメージする日本なのです。
3年後に買い取る⁉ そこにマスターの本気を感じます!
カウンターに向かって後ろ側に厨房がありますね。



コロナ禍に何ができるか? と考えました。年に一度、海外へ勉強しに行っていました。その時、即興で日本酒と料理のペアリングディナーを行うことが一番楽しくて、お店でそれをやりたいと思案していた時に、料理人の山﨑くんが来てくれたんです。
もともと外だったところをコロナ中に増設して。
そうだんったんですね。(店内に見入ってしまう)


もともと山代出身で、日本酒と出会ったのが21歳の時です。
東京のオーセンティックバーで一年半修行してから、26歳の時に地元に帰ってきました。
当時焼酎ブームが終わって、ハイボールブームがやってきた頃で、地元の人からは、日本酒を扱ったお店は流行らない、ハイボールをメインにしたらどうかともと言われてしまいました。
そんな中、山中温泉の人が日本酒のお店に賛同してくれたので、山中温泉でお店を開くことにしたんです。
そこで、この店の近くにある、辻酒販さんで4年働いたあと、30歳の誕生日にこの和酒BARをオープンしました。21歳の時から地元でバーを持ちたいという念願がかないました。
その頃からずっとバーを持ちたいという思いを持っておられたのですね。


お店オープンからコロナ前まで、いろいろと経験を積んで楽しめましたね。
お店をオープンして半年後の冬に、お客様がおいしい燗酒が欲しいと来店されたことがあったんです。
自分の思うおいしい燗酒を提供したら「確かにおいしいけど、季節を感じなさい」と助言をもらいました。それからは、お店の前にある長谷部神社に毎日お祈りしに行くようになり、階段上る中で季節を感じるようになりました。
そこから学びを得たんですね!


他にも、バーのお客様のお友達に「日本酒が知りたいから」と、ニューヨーク行きを打診され、2015年の4月に、ニューヨークに行ったことがあります。
富山初の酒匠も台湾に行って講演をしてきたという話を聞いた影響もあり、行ったことのない海外へのオファーを受けて初めてパスポートを取得しました。
英語を話せないけど、酒パーティーしたところ、『ニューヨーク・タイムズ』に載せてもらいました。
掲載されたことは、はじめは実感がわかず、山中の人からも『ニューヨーク・タイムズ』は認知されていなかったので、掲載を見たといってアメリカの人が来てくれてようやく(自分の実績を)実感しました(笑)。
渡米したときに泊めてくれた方が来てくれたり、いろいろな方と知り合うきっかけとなりました。
阪急百貨店からも催事のお声がかかり、それも実感がわかないまま参加しました。
一回目出たとき、たくさんのお客様をさばけなかったのにお客様からは好評で、二年後にまた呼ばれて、計四回、催事に参加しましたね。
阪急百貨店の催事に出ることで、大阪の常連さんにも喜ばれ、関西方面のお客様が増えるきっかけになったと思います。
石川のイベントにも出ておられますし、イベントに積極的に参加されているんですね!


呼ばれるんです(笑)。
お店ができたときはイベントによく参加していましたが、しばらく参加はしていませんでした。
石川県の「サケマルシェ」というイベントは新幹線開業の三年前から始まって、その一回目のときに“日本酒コンシェルジュ”が必要と感じ、福光屋(金沢市にある酒蔵)さんに言ったところ「きみがやってみたら」と言われ、本当に一年後にアドバイザーとして呼ばれることになったんです。その時から石川県の素晴らしいソムリエさんといっしょにやらせていただいております。
イベントに箔が付きますね! 詳しい人が説明してくれるのは、お客側からするとすごくありがたいです。
ふらっとここに来て、日本酒初めて好きになったというお客様もいらっしゃるのでは?


いらっしゃいますね。ここでしか日本酒飲まないという方もいます。良いのか悪いのかわからないけど。
初めていらっしゃった方には、今だとどのようなお酒をおススメされますか?


どこの出身地かによります。出身地によって好みがわかれるので。
私もおススメを何かいただいてもよいでしょうか?
ちなみに出身は京都府の北部です。


そうなんですね。ちなみに最近おいしかったのは?
もともとさっぱり系が好きで、五百万石系の、新潟のお酒が好きです。
富山だと最初は勝駒が好きで、そこからだんだん、三笑楽が好きに。


全然すっきりじゃない(笑)
(笑)。
地元の方だと『香住鶴』。あとは京都の祝米を使ったお酒ですね。旨味が凝縮されているように感じておいしいと思いました。


そうなんや~。では、『加賀の月』をぜひどうぞ。蔵の中での熟成もちょうどよく、香りもよくてやわらかいです。

おいしすぎる…!!
(好みど真ん中!)

営業時間が2時から5時ですね。やはり観光のお客様を意識して?


そうですね。日中、街歩きするお客様が多いので。僕も観光に行ったら昼から飲みたいですしね(笑)
呑みたいですね(笑)そこも、このバーの魅力ですね。

店内には最新の日本酒の本も置いてあり、滞在時間も長めになるのは間違いない。

やはり日々日本酒の勉強をされているんですか?


前は新しいことを勉強していましたが、今からは歴史を勉強したいと思いやっています。
普段は味や香りから説明するんですが、
フランスは酒蔵さんが創業何年かなど、歴史から説明しないといけないんです。
これからは国内外もそういう説明をしていかなければならないなと思います。
さすが酒匠さんです!

知らないことはとことん調べ、出荷額などのデータなども頭に入っているマスターとのお話は非常に勉強になり、刺激を受けた一日でした。
今回はわかりやすく対談式にまとめましたが、本当はもっと気さくなお話をされる方なので、ファンが多い理由がよくわかります。ぜひマスターに会いに、そしてマスターがこだわって管理しておられる日本酒を飲みに足を運んでもらいたいです。

『和酒BAR 縁がわ』
石川県加賀市山中温泉南町ロ-82
営業時間 14:00~17:00/18:00~23:00
定休日 木曜日
Instagram @washubar_engawa_yamanakaonsen